【犬編】第2回:分離不安

分離不安とは?

家族の方が外出したときに「物を壊す」「泣く(犬の心情を考え、ここでは意図的に"泣く"と表記)」「排尿・排便をする」などが見られることがあります。これが"分離不安(別離恐怖症)"です。家族の方の外出直後(30分以内)に多く、また、家族の方が出て行った出入口に近いところで見られます。これは家族の方とのつながりを取り戻そうとする行動であり、犬の心理過程を想像すると頷けるものがあります。
「物を壊す」は、ドア・窓・床・壁を引っかいたり、カーペット・ソファー・家具を傷つけたり、靴・スリッパをバラバラにしたりです。ドア・窓は犬にとって唯一の逃げ道です。一人にされることから逃れ、なんとか家族に合流しようと考えます。その対象がドア・窓です。ドア・窓がダメなことがわかると、今度は欲求不満から他の物に八つ当たりします。転位行動と呼ばれる行動です。その対象は床・壁・家具などです。家族の匂いが残ったもの、つまり履物を対象とした破壊行動もあります。
「泣く」は、家族が出かけた直後に、大きな声で泣いたり、吠えたり、遠吠えをあげたりです。家族にパック(群れ)に戻るように呼びかけている行動と考えられます。少し甲高い泣き声が特徴です。ただし、犬の大きさ、状況によって、音の高低に差があります。
「排尿・排便をする」は、不安が昂じての結果であり、場所を選ぶ余裕もありません。所構わずという状況になります。これも一種の転位行動です。自分の匂いを充満させることで不安を解消しようという行動かもしれません。
分離不安の根っこにあるのは恐怖心です。家族と離れ離れになることへの恐怖です。分離不安が突然始まることもあります。その誘因を表にまとめました。分離不安の犬の家族の方は思い当たるところがあるのではないでしょうか。
誘因
留守番中に怖い出来事を経験した
  • 留守番中、大きな雷鳴を聞いたとき
家族の生活パターンが変わる
  • いつも家にいたお母さんがパート務めを始めたとき
中断していた学校や仕事が再開する
  • 長い自宅療養の後、家族が仕事に復帰したとき
  • 夏休みが終わり、一緒に遊んでいた子供が学校に行き始めたとき
新しい家への引越し
  • 転勤で別の土地に移り住んだとき
環境が一時的に変わる
  • 事情があり友人の家に一時的に犬を預けたとき
ペットホテルに預けられる
  • 旅行のため、ペットホテルに預けられ家に戻ってきたとき
赤ちゃんが生まれたとき
  • 赤ちゃんがかわいくて、犬に注意・関心を向けなくなったとき

分離不安に対する対処法

基本的対処法

(1)犬の言いなりにならない
(2)自立を促す

簡単そうに思えますが、実際はそう簡単ではありません。分離不安はなかなか治らない問題行動の一つと言えます。

ケーススタディ

(1)犬の言いなりにならない
  1. 犬の要求行動には一切応じない
    犬は、食べ物、遊びなどを求めて、吠えついたり、飛びついたりすることがあります。これが"犬の要求行動"です。この要求にやすやすと乗ってはいけません。「よしよし、どうしたの、何か欲しいの?」ではいけません。毅然とした態度を示しましょう。
  2. 犬と接触する時間・長さは家族が決める
    呼びもしないのに、のこのことやって来て、遊びを要求するようなときは、完全に無視してください。そのうち諦めて離れて行きます。そのときがチャンスです。すぐに呼び戻し、撫でてあげたり、遊んであげたりしてください。犬に物事を決めさせてはなりません。
  3. "自由"ではないことを示す
    ご家族に何かして欲しいときには、その前に命令(来い、お座り、伏せ、待てなど)に従わなければならないことを教え込んでください。この場合、通常の服従訓練もより厳格に行ってください。
(2)泣きわめきをやめさせ、自立を促す
  1. 敷物(お気に入りの毛布など)の上で"待て"の訓練をする
    お気に入りの毛布などを置いて訓練をします。まずは"来い、お座り、待て"です。次に出入口から離れた場所で"待て"をさせます。訓練が終了したら、毛布などは取り除いてください。毛布などを占有させないためです。
  2. ガム、おもちゃなどを敷物の上に置き、それで遊ばせる
    毛布の上で"待て"の訓練中、お気に入りのおもちゃ、ガムなどを置いてみてください。"待て"をすることが苦痛ではなくなるかもしれません。訓練が終われば、おもちゃ、ガムは取り除いてください。与えてしまってはいけません。
  3. 静かに待つ訓練をし、待てたときにはご褒美を与える
    静かに待てたときは、撫でたり、誉めたり、ご褒美を与えたりしてください。
  4. 待つ時間を徐々に長く、そして様々にする
    待たせる時間を徐々に長くしてください。また、待たせる時間を様々に変えてください。いつも同じ時間はいけません。あるときは10秒、あるときは10分。つまり、家族が帰ってくる時間を、犬に推測させてはならないのです。
  5. 泣き出したときは静かになるまで待つ
    泣き始めても無視してください。静かになるのを待つのです。そして、静かになって3分間はドアを開けてはいけません。3分間待ってから、おもむろにドアを開けてください。すぐに泣き始めたからといって、叱ったり、罰を与えたりしないで下さい。気長にやってください。
  6. 矯正訓練前、留守番訓練前に運動をさせる
    訓練前に少し激しい運動をさせるのも良い方法です。少し疲れさせて、"待て"の訓練をさせると意外と長い時間待つことができます。単に疲れているだけかもしれませんが・・。