2014.05.13

モスキート

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「ブーン」という音で目が覚める。

ぼーっと寝ぼけ眼で空を見つめ、細かい編み目の中にいることを確認してまた眠りにつく。すると、間もなく耳元で鳴る「ブーン」という不快音。あんなに用心深く防いだつもりなのに!なぜ?私は苛立ち、大きく溜め息をついてガバっと布団から抜け出しハッとする。

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蚊帳に穴があいているではないか・・・
しまった!
寝てる隙に狙うなんて厚かましい!と、私は敵を見つけるまで一晩中戦闘態勢に入る。

ここは地球の裏側。たかが蚊、されど蚊。お願いします、マラリアにしないで!と、蚊に懇願する。

寝る前にベッドの周りにこれでもかと殺虫スプレーを散布し、自身が窒息しそうになりながら「どうだ!」と得意満面に捕らえる我が身が恐ろしく滑稽。

しかし、アフリカや南米の熱帯地域では日本の殺虫剤や蚊取り線香はまったく威力を発揮しない。蚊の方が断然強力で、へっちゃらさ!とブンブン飛んでいる。

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変化していく環境に蚊もどんどん順応していく。破壊力のある強力な殺虫剤が開発されると、蚊もますます強靭な抵抗力を付け、この世界を生き抜いていくような気がする。

蚊取り線香よりも殺虫剤よりも最もアナログな蚊帳に私は安心感を得る。蚊帳は紀元前5世紀頃のエジプトですでに使われていたという。沼沢地帯よりも上方にいたエジプト人は高い塔の上で眠り、高く飛べない蚊を避けていた。一方、下方の沼沢地帯に住む人々は昼間魚を捕るための投網を、夜には無数にいる蚊除け対策に蚊帳として使用していたらしい。美しいクレオパトラも鬼の形相で蚊と奮闘し蚊帳は手放せなかったのではないだろうか。

夏休みに田舎の祖母の家に宿泊すると、いつも大きな蚊帳の中、家族で川の字になって眠っていたのを思い出す。蚊帳の中で安心感に満たされるのはそんな思い出も重なっているからだろうか。

地球のあちらこちらに行き、その都度蚊と戦っていると蚊の存在意義など考えても仕様がないのではと思う。「どうして生きているの?」と、蚊に問えば逆に聞き返されるだろう。。。「じゃあ、なんで人間なんて生きているのさ!」と。それでも、やはりどの生き物も生態系のバランスには欠かせない大切な命であり、きっと意味があるのだろう。

驚いたのは、血を吸うのはメスばかりだということ。つくづくあらゆる生き物は子孫繁栄のために必死に生きているのだと思う。産卵に備えて力を付けるため?体を守る為に発している毒なの?すべては命をつないでいくためなの?と、問答し、そんなメスのためなら吸っていただいても構わないとさえ思う。ただし、痒みと病原菌を媒介しなければの話しなのだけれど。

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そう、吸うだけならいいのだ。痒みや病原菌をもたらすことがなんとも悩ましい。かつて古代ギリシヤやローマでもマラリアが蔓延し、パナマ運河の開拓時にも労働者は蚊に苦しまされ、太平洋戦争でもマラリアで命を落とす兵士たちも多かったそうだ。

ちっぽけな蚊でも大群になればあらゆる生き物を掻痒苦で痛めつけ、百病の王と化す。

痒みといえば、タヒチでは何カ所も刺され、あまりの痒さに真夜中に何度も目が覚め身悶えした。翌朝、地元の人がつくったモノイオイルなるものを提供され、刺された箇所に塗ると痒さがすーっと癒された。どんな痒み止めも効かなかったのに、地元のオイルが最も効果があったのだから驚いた。

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モノイオイルは南国の甘い香りのするタヒチに古くから伝わる香油で、ポリネシアでは伝統的に太古の昔から使われている万能オイルだ。
ココナッツの実の胚乳を削り、そこに潰したカニからとれる脂肪分とタヒチの国花ティアレの花のつぼみを一緒に漬け込んだオイルを濾過して作られる。肌や髪の保湿、風邪や怪我をしたときにも使われ、鎮静作用もあり、神聖な儀式でもお清めとしても使われているそうだ。
人にもよるのかもしれないけれど、私には確かに効果があった。やはりその土地に古くから伝わるもの、その土地で採れるものが一番適しているんだなと感心した。

私は副作用がきついのでマラリアの薬は飲まない。薬を飲まずに、なんとかマラリアにかからず元気に過ごしてきた。

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マラリアになるのは土地の風土に体を慣らさせる為の登竜門なのではないかという思いもある。
だからなるべく刺されないように気をつけ、免疫を高めるよう体調管理にも気を配っているつもりだ。

ある人が言っていたことだが、「必要以上に殺菌、殺虫してはいけない。いい菌だっているのに、その菌まで殺してしまう。共生していかなくては。人間にはますます免疫力がなくなってしまうよ。恐れてばかりいると、恐れが恐れを引き寄せる。」と。

おかげで南米やアフリカ大陸を訪問する機会は回を重ねるごとに、だんだん何事にも動じず恐れなくなってきてはいるけれど、どうしても蚊には神経質になってしまう。

おまけ

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病原体のマラリア原虫は、媒介動物であるハマダラカの唾液腺にスポロゾイトとして集積している。メスのハマダラカは産卵のために吸血を行い、その際に唾液を注入するので、スポロゾイトが体内に侵入し、高熱や頭痛、吐き気などの症状を呈する。悪性の場合は脳マラリアによる意識障害や腎不全などを起こし死亡する。

過去には、日本やヨーロッパなどでもマラリアが流行したと考えられている。しかし、現代では、マラリアの発生、流行は、熱帯と亜熱帯地域の70か国以上に分布している。全世界で年間3 - 5億人、累計で約8億人の患者が発生し、死者数は100 - 150万人に上る。

マラリアの検査・治療は近年、目覚ましい進歩をとげているにもかかわらず、途上国ではマラリアの流行が収まらず、多くの人が命を落とし、その大部分はサハラ以南アフリカにおける5歳未満の小児である。

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