2014.01.14

三つの車を背負うレーサー

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取材当日、雲一つない青空。天高く聳える富士山。美しき紅葉。お誂え向きのレース日和。 私はある答えを探し求めて富士スピードウェイへやって来た。私たちの永遠のアイドル、マッチをこれほどまでに突き動かすレースの世界とは一体何なのだろう。

近藤真彦氏は1979年、芸能界デビュー。1984年、レーサーとしてデビューし、2000年、KONDO RACING TEAMを結成。現在、チームのオーナー、監督、ドライバーのひとり3役をこなしている。

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「僕は自動車免許取り立ての頃、日産のコマーシャルをやってたんですね。その時、日産関係者が富士スピードウェイに連れて来てくれたんです。
監督としては大先輩、時にはライバルになっている星野一義さんがレースしてるシーンを見て『こんな世界があるんだ』と度肝を抜かれた。
ものすごく刺激を受けたんだけど、僕なんかその頃歌うたってましたから(今でも歌ってるんですけど)、レースは別世界のことだと思ってた。」

「けれど、星野一義さんから『いや、アマチュアが出るレースがあるんだよ。近藤君もやってみない?若いんだから。』と声をかけていただいてアマチュアレース出たのがきっかけ。そこから少しずつステップアップして自力で何とか全日本選手権まで出場したんだよね。」

そこで日産ワークスの人に声をかけられ、ワークスと契約できル・マン24時間レースに参戦。しかし、やはりそこはプロのスポーツの世界。甘くはなかった。

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「勝てないと給料減らされ、首になり、さあ、首になりました、どうしよう、、よし、何とか今僕を応援してくれてるスポンサーさん集めて、小さくてもチーム作れないかなと思ってスタート。徐々に成績出していくと今度は、日産自動車やトヨタ自動車が「KONDO RACINGは応援しがいのあるチームだ。あそこを応援すれば日産もトヨタもいい成績が獲れる。」となる。それでメーカーのサポート受けるようになって、そこからチームは飛躍したんだよね。」

力を示せば這い上がることが出来る実力社会。
たとえ小さなチームからでも、上を目指してここまで来た。その上昇思考と熱い想いが伝染し、周りを巻き込んでいる。

レースの何に興奮するのだろう?

「レースで一番興奮するのは速さとかではなくて、前の車をやっつける!ってことしか考えてない。そこだけです。」

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「選手として一番思い出に残っているレースは…、やっぱり世界三大レースといわれているフランスのル・マン24時間レースかな。随分走ったので。本当に過酷だったけど、あのレースにちゃんとプロとして出場できたっていうのが一番思い出に残ってる。」

「チームとしては初優勝したセパンでのレース。本当に苦戦したんだけどやっぱり一番だね。泣くもんか!って思ったんだけど、最後の2周目くらいからモニター見てたらボロボロ涙が出てきてもうぐしゃぐしゃに泣いちゃいましたけどね。」

「いい仕事させてもらえてるなって思いますね。男が抱き合って男泣きするような仕事ってそう無いと思うから、幸せだなと思います。」

歌の受賞で流す涙、レース場での涙、それだけ情熱を注げるものがあるというのは幸福なことだと思うが、芸能界とレース活動、どちらに比重を置き、マッチの目指すところはどこなのだろう。特に芸能生活との両立において。

「今は五分五分でいけるんですけど、一時期はレースばかりだったから。 自分が走らなくなってからは東京のヘッドオフィスと御殿場のファクトリーを行ったり来たりのばっかりで。歌をうたったり、演技したりする時間が無かった時代が10年くらいあって不安にはなりましたよね。芸能界に戻っても自分の席は無いんじゃないかって。もちろん芸能人の人多いんですけどね、そういう人は。芸能界もレースの世界も両方とも僕にとっては大事な仕事なのでどっちが好きと比べることはできないです。」

ドライバー育成に留まらない、外国メーカーに頼らざるを得ない技術面の向上、環境を考えたエコ車、高度な安全対策を導入するなど課題は多いのではないだろうか。

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「スーパーフォーミュラ(フォーミュラ日本は,2013年から名称をスーパーフォーミュラに変更した)の車とGT500に参戦していますが、来年からGT500っていうクラスはドイツのツーリングカーシリーズのDTM(ドイツツーリングカー選手権)のボディと全く同じレギュレーションになります。
だから将来的には、ベンツだBMWだアウディだというところと世界選手権みたいなことが出来る要素のあるような車に、来年から変わります。
テストもやってますし。」

「スーパーフォーミュラの方は今スイフトっていうアメリカのシャシーを使ってるんですけども、来年からはダラーラっていうヨーロッパのシャシーを使うので、見かけはほぼF1と同じような感じですね。タイムはF1のほうがちょっと速いぐらいですけど。戦ってる内容はほぼ変わらないくらいの感じ。」

「今季勇退する現行車両に対しては、やっぱり僕らレースやってるんでもうとにかく「新しいもの新しいもの」なんで、まあ、この車でよく戦ったなっていうのと、うちのチームには苦手だったなっていう要素もあったりするので、早く新しいのに変わってほしい。もうストーブ・リーグ始まってますよ。ここにいた選手、エンジニア、チームメカニックなんかはもう、活躍したチームを裏からコンコンってやってますよ。来年幾らか幾らかってやってますよ。外人ドライバーたちがその辺にうろちょろうろちょろし始めて、近藤のスケジュールちょっと5分くれ、で行くと俺はこういうキャリアがあるから乗っけてくれないか。それで今はもう大変なことになってます。」

レースの話しになるとマッチに火がついたように加速する。そして芸能への未来も捨てていない。

「嫌でも歳とっていくんであまり背伸びせず等身大の歌うたってれば大人の歌をうたえるようになるんじゃないかなと思っています。」

マッチには轟丞と名付けた息子さんがいる。その字の中では、妻と子と自身の3つの車が助けあっている。永遠のアイドルマッチは、もはやアイドルには留まらない。歌手として、レーサーとして、そして父親として、どの世界でも「真剣勝負」。命懸けの闘いに挑みながら生きる男の本気なロマンを感じた。

富士スプリントカップ2013では今年もレジェンドカップにドライバーとして参戦。本大会のコンディションを伺った。

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「サーキット走るの久しぶりだったんで面白かったですね。ヘルメット被ってレーシングスーツ着てその車なりに一生懸命走んなきゃいけないから恐怖感もあるし。リミッター効いてるから180km以上出ちゃいけないんですよ。それなのに抜いてく車がいるんで完全にインチキしてる奴がいる(笑) ま、そういうのが許されるレースなんで完全に楽しいイベントですね。」

(髙居さん)------先輩・後輩があるからな

「そういう事情もあったりして。レース界ってスター選手が多かったんだよね。髙居さんくらいの年齢の車好きの方だったら、え!髙橋国光さん出てる、星野一義さん出てるんだ!とか。やっぱり皆んな知ってる往年の素晴らしいドライバーさん達が出てるので、見応えはありますよね。ファンの人もすごく喜んでくれる。色んなスポンサーさんからいつも『レジェンドカップが一番面白かった』なんて言われてガックリきちゃうんですよ(笑)」

「先ほどのレジェンドカップで、マッチに腕立てさせんのか!?」なんていうアナウンスも会場に響いていましたが?

「あれは僕じゃないですよ(笑)ジャンプスタートは僕の相棒がやったんです。」

最後に共立製薬さんと、日本カルミックさんの社員に皆様にメッセージを。

「共立製薬の皆さんには、僕は犬のことで感謝してるんです。10年以上可愛がってた大型犬が病気になりがちだったところ、髙居さんがから『お前、これ食わせてみたら?』といただいたドッグフード食わせてたら2年ぐらい寿命が延びた感じだったので、お礼が言いたいなって思います。」

「共立製薬さんより早くに応援していただいてた日本カルミックさんに関しては、僕は、おトイレ入って "Calmic"って書いてあるとそこの従業員さんにわざと「ここのトイレは充実してますね!」って必ず言うんですよ。「なんでですか?」と聞かれたら僕のお知り合いがここのトイレやってるんです。」と言うのが、もう口癖になってますよ。」

スポンサーのうちの一人が共立製薬と日本カルミックの社長、髙居隆章氏。お二人はいつ頃知り合ったのだろう。

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「還暦はもちろんやったので、10年以上前かな。最初会ったときはまずいんじゃないか、反社会的なお方かなと思ってたんですけど、(笑い)、レースの話しをしたところ『俺の出来る範囲の応援はもちろんしてやる。その代わり、イベント事があった時には顔出して協力してくれないか。』と、初めて逢ったときから心強いサポーターです。ただチームのサポートしてくれるからということだけだったらこういうお付き合いも無かったのでしょうけど、これは社員の皆さんそうだと思うんですけど、人を惹き付けるお人柄というか、優しさとか、僕はそういうところに惹かれましたね。また、高居さんの顔の広さ。すごい人脈者で高居さんのお知り合いの方からもいっぱいサポート受けてレース頑張れてます。 僕はどんな忙しい仕事があっても、髙居さんの葬式だけは出ようと思ってます。日にち決めてくれって話しなんですけどね(笑)」

マッチはメダカ愛好家

「メダカって奥が深いんです。一時期1,000匹どころじゃなく、10万円のメダカも何匹か飼ってたんですよ。20円のメダカでも何代か先行くとポンと10万円のメダカが出たりする。隔世遺伝的な要素があって、だからすごく楽しいんですよ。上から縦で見た方が可愛いんです。ダイヤモンド型になっててね。横から見るとお腹が出てて《だるまメダカ》っていうんですけど…」
「------それ、俺だ。」(と、髙居さん。)
「10万円のがふやけて死んでしまうと、フグ食っときゃよかったって思うけどね(笑)」

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