2013.12.10

ノルウェー 神がもたらしたもの

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ノルウェーの犬

ノルウェーの北極海諸島原産の歴史ある犬種、ノルウェジアン・パフィン・ドッグ。
先祖は氷河期からの生き残りともいわれ、その名の通りパフィンという鳥を狩猟する。世界中で5,000種もの犬が存在する中、断崖で狩猟するパフィン犬だけが授けられたスペシャルなギフト、
それは・・・

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まず、指が6本あり、泳ぐ際には立った耳をパタンと折り畳み水の侵入を防ぎ、巣穴に潜り込む際には前足を左右90度に開くことができる。
さらに、首の骨は二重関節になっていて、首を後ろに反らして背中に付けることができるなど、柔軟な体を持つ。まるで超人ならぬ超犬のよう。
あまりにも変わった特徴をもつこの犬。
首の反り具合は傍から見ると虐待しているように見えてしまい「やめて~!」と悲鳴があがるけれど、決して無理矢理反らせているわけではなく自然な柔軟性。見た目はハスキー犬とコーギーを足したような・・・性格はノルウェーの人々のように少しシャイだけれど、ひとたび親しくなれば陽気という感じ。

食餌もそんなに多くは必要とせず、とても飼いやすい犬だとか。

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日本に連れて来ればたちまち人気が出そうだけれど、果たして日本でノルウエーのような自然環境が提供できるだろうかと考えてしまう。
環境が変われば特別な身体能力は衰えてしまうのではないか。それとも新たなスペシャルがまた芽生えるだろうか、と、ネガティブとポジティブがせめぎ合う。
ダイナミックなノルウェーの野山を跳ね回るパフィン犬にリードをぐいぐい引っ張られながら、どんなに極寒だろうとここで暮らすのが一番幸せなことなんだろうなあと、犬の幸不幸に思いを巡らせる。

ノルウェーの森

ヴァイキング時代から「森の恵みは神がもたらしたもの」という考えがノルウェーには深く根付いている。自然との共生や調和を大切にするノルウェー人は、休日になるとのんびりと森や山で散歩をたのしむ。

ノルウェーでは、森は誰かの土地でありながら、その所有者に断りなく森の中を歩いたり、スキーで滑ったり、自生する木の実やキノコをとったりすることが許されている。
土地は一体だれのものなのだろう?と考えさせられる。土地の所有権って何だろう。
人間が自然の所有権を持っているのではなく、自然が所有権を持っているのでは?とも。

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あれよあれよという間に見つけたキノコを籠に入れる小さなジェントルマンに「へへへ、見つけたよ。僕のをあげるよ」と、森の宝物を分けてもらい、胸がキュンとした。

"She showed me her room, isn't it good, Norwegian wood ♪"・・・素敵じゃないか、ノルウェーの森。と、She を Heに変えておもわず口ずさみたくなる。

ビートルズの歌や村上春樹の小説からも感じられるような、どこか陰があり濃厚で鬱蒼とした神秘的な空気に満ちているノルウェーの森。

そうして歩いていると、次第に木々や葉がトロル(妖精)に見えてきて今にも動き出しそう。

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人の顔も誰一人として同じ顔ではないように、キノコにもいろんな色、形があるのだと気づく。
毒を持つキノコほど見た目が色鮮やかでハデで、食べられるキノコほど素朴で地味だと感じたけれど、私の誤った判断だったのか?実は地味でおいしそうなキノコほど猛毒を持っているんですって。見かけによらない・・・。 それにしてもなぜ毒を持っているのだろう。

意外なことに、自分の身を守るために毒を持っているわけではないという説もある。キノコは地球上の物質循環になくてはならない存在で、動植物の死骸を分解し土へ還すという役割を担っている。鬱蒼とした森の中ではカラフルな装いで生き物を惹き付け、植物が動物の死骸を養分として吸収しやすくするために、積極的に自分を食べさせ動物を死に追いやっていると考えられなくもないという。

そうだとしたら、なんてしたたかな毒の働き。尊い"物質循環"だと思う。

ノルウェーの渦

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この循環や地球の呼吸のようなものを感じたのが、サルトストラウメンの渦潮。潮の満ち引きによって潮目が変わるとき、に海面の高低差によって渦潮が発生する。

ここサルトスラウメンの渦潮は、大きさは鳴門ほどではないにしろ、数の多さは比べ物にならない。竜巻のような渦が現れては消え、現れては消え、まるで海が生き物のように見えてくる。

サルトストラウメンの渦潮の回転速度は世界最速の50km/h。狭い海峡に大量に出入りする潮流が、渦のスピードを加速させている。

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言伝えによると、花嫁さんが向こう岸のお婿さんに会いに海峡を渡ろうとして渦に巻き込まれて沈んでしまったとか。その花嫁は奇跡的に海底から浮き上がり助かったとか、そのまま吸い込まれて命を落としたとか、聞く人によって結末が様々に変化している現在だけれど、世界一危険な渦潮であることはまちがいない。

その渦上でボートを走らせてくれたガイドさんは、16才の頃からボートを操縦し、サルトストラウメンの潮の流れを知り尽くしているというベテランだった(今何歳なんだろう?18歳なら経験2年のペーペー、36歳なら経験20年のベテラン)。波乗りならぬ渦乗りが成せるのはベテランの技であって、シロート感覚で遊びにいったならば間違いなく渦に飲みこまれるだろう。

「潮の流れを常に何秒か先に読むこと、そして、自然に逆らわないことが大切だ。」と、プロの真剣な表情だった。

渦潮は海水に酸素を取り込み、山の養分や海底の栄養素を巻き上げ、そこに大量のプランクトンが集まる。 さらにそこに小魚が集まる。そして、タラの仲間やダンゴウオ、オオカミウオ、イソギンチャクなど、豊富な生命が集う美しい世界が広がる。鳥達は、海面で渦にのみ込まれることなく、ぐるぐると回転して魚を狙う渦乗りの達人。そして岸では人間が釣竿を構えている。

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ここはサルトストラウメンの海中レストラン。
わたしはこの渦からあることに想いを馳せる。
地球上に突如出現するミステリーサークルにしても、渦潮にしても、人の頭のつむじにしても、なぜみんな円を描くのだろう。丸い月、丸い太陽、丸い地球。 「この世の中に直線はない」と言ったのはダ・ヴィンチだったか。そう、確かに自然界に直線はない。直線が延々と続くとやがて円になる。

生まれるときは満ち潮、黄泉の国へ行く時は引き潮。この世界は一方通行ではなくてすべての生命が循環で結ばれているんだなあと、実感した。

ノルウェーのオーロラ

太陽が宇宙に放出する電子の群れが地球の磁場に引き寄せられ、大気中の分子や原子とぶつかる。
その衝突で大気中の分子や電子が放つ光が、夜空に緑色のベールのように輝きながら揺れるオーロラ。

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この現象がもっとも強く起きるのが北極圏と南極圏。ノルウェー北部、北極圏のロフォーテン諸島にいた私は、幸運にもこのオーロラに遭遇した。

夜空を舞うオーロラを見ながら、隣の人が「この光、いま宇宙から見ると、此処からチリの方まで大きな輪っかになって現れてるみたいですよ」、と教えてくれた。 このオーロラも円の一部だけを見ていることになるんだと感動。

夜空を舞うオーロラに住人は慣れっこなのか、部屋から出ずにあたたかい暖炉に当たって読書に耽り、町は静まっていたけれど、こちらにとっては初めてのオーロラ。よりはっきりと見たくて、なるべく灯りのない場所を求め、スヴォルヴァーの町を大の大人が興奮して駆け回った。

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一時間以上震えながら幻のような時間に陶酔し、部屋に戻ってもまだべッドの中から夜空を眺めていた。
翌朝、ホテルの従業員さんたちに自分が撮ったオーロラの写真を意気込んで見せると、はにかみながら戸惑うシャイボーイにシャイガール。
「あれは夢だったのかしら?」と、狐につままれたような朝。

そして、この世の中で「本当に大切なものは目には見えないんだよ」という星の王子様のキツネの言葉を思い出す。
地球と人間と動植物、はたまた月の働きや太陽の働き、水や空気の存在。固く結ばれたまんまるな絆。
北極圏で「寒い、寒い!」とふるえながら、まあるい地球に自分が生きていることへの不可思議さを感じずにはいられなかった。

閑話

冬になれば森の小道はクロスカントリー用のコースになり、「ノルウェー人はスキーを履いて生まれる」と言われるくらい冬にはスキーを楽しむ人々。
ちなみに同じ北欧でも、デンマークは山が少なく平地が多いため、ノルウェーではスキーで転ぶ人を見かけたら「あの人はデンマーク人よ」と言うんですって。 冬はスキーを楽しむノルウェー人だけど、夏は海でボートや海水浴を楽しむスポーツが盛んな国なんですね。

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