2012.08.14

ぶりKING

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養殖ブリの水揚げ高日本一を誇る鹿児島県。その鹿児島県出水郡、長島近海の水温は年間平均19℃という養殖環境に適しており、美しく、おいしい身のしまったブリを育んでいる。東町漁協全体でのブリの出荷は、年間平均250万尾にもなり、東町漁協のブランド魚である「鰤王」は年間90万尾が加工(CUT)され、そのうち30万尾が海外へ輸出され、60万尾が国内で消費されている。 

しかし、ブリを始めとする魚たちも病気にかかる。ひとたび病に冒された魚の大多数は死に、養殖したうち4割もの魚を失うこともあり、漁業に損害を与えてしまう。

そうした病気を防ぐ為にこれまで行 われていた対策は、抗生物質などによる細菌感染症の治療が主体であったが、ここ数年で多くの水産用ワクチンが 承認され、魚の病気を治療する対策から、病気を予防する対策へと進展。

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水産用ワクチンは、魚体や環境中へ の残留等の心配もないことから、より安全な水産物の生産に寄与している。
そのワクチンの魚1匹1匹への接種指導を 行っているのが共立製薬株式会社。

6月下旬、鹿児島県出水郡長島町を訪れ、東町漁業協同組合の協力のもと、養殖ブリのワクチン接種の現場を取材させてもらった。

共立製薬の水産用ワクチンはブリとカンパチ用。東町漁協でのワクチン接種は100%だそうだ。長島本島と伊唐島を結ぶ伊唐大橋を望む湾には、何層もの生簀があり、ブリの"もじゃこ"がうじゃうじゃと泳いでいる。

まず生簀の稚魚を網ですくい上げ、麻酔液の入った桶に入れる。バタバタ動いていた魚たちはたちまちおとなしくなり接種台へと移され、12台の注射器から12人の漁師たちがワクチンを接種し始める。ワクチン接種と聞いて私が想像していたのは、無機質な部屋で白衣を着た人々の作業風景であったが、実際の現場は陸から100mもない沿岸に浮かぶ舟の上で、潮風を肌に感じながら日に焼けた勇ましい漁師たちによる繊細な作業。このコントラストが楽しい。

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瓶に入っているのは「ピシバック注3混」というワクチン。

1.魚が黒っぽくなり内蔵が蝕まれる病気には、<イリドウィルス感染症>
2.ヒレが赤くなる症状に、<ぶりビブリオ病>
3.目が飛び出る症状に、<α溶血性連鎖球菌症>

上記の3種類の予防ワクチンが混合されている。

20匹打つごとに「はいっ」という掛け声が飛び交い、少し離れた場所で一人の女性がその掛け声をキャッチし、数取器を片手に記録。ワクチン接種と同時に魚の尾数も確認し、さらには選定も行っているのだ。カウントしながらの作業は、私の目が追いつかない程のスピードと集中力、そして正確さ。皮膚病に罹っている魚や、活きの悪い魚、見栄えの悪い魚はお祓い箱。イケメン予備魚しか生き残れない。その選定ができるのも、魚のプロフェッショナルである漁師ならでは。水産用ワクチン接種の役目を担うのが漁師でなくてはならない理由のひとつなのだろう。

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そもそも、なぜ魚が病気になるのかということである。それは海が汚染され、おかしくなっているからではないか。魚の命さえも奪い、漁師たちを困らせている赤潮の発生。
赤潮の最大の原因は私たちが出す生活廃水、工業廃水、農業廃水である。湾の底には必ず川の水が流れ込んでいるという。その川の上流は森林。よって上流での森林破壊、ダム開発、除草剤や農薬を散布して汚してしまった土や、家庭から出る生活廃水は、やがて海へ辿り着き魚介類にも蓄積するということだ。

つまり私たちの暮らしのあり方そのものが海へ繋がっている。海がおかしくなるのは私たちの生活のあり方、農業のあり方にも大きく関わっているということ。

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魚が病気になる一因は私たちにもある。

海の水質、魚の命、そしてわたしたち人間の命、この地球上にいるすべての命が繋がって共生しているということ。循環する豊かな自然環境こそ、日本の(地球の)大切な永遠の資源であり私たちの命を守ってくれているということを忘れてはならないのだと気づかされた。

長島の豊かな海で育まれたブリを始め、食卓に出されたすべてのいのちに「いただきます」と感謝を捧げたい。

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